2023年8月27日日曜日

自作CPUで遊ぶ 5

これまでのプログラムは1個のタイマーを使いタイマー割り込みハンドラ内で割り込み周期を段階的に変えることでモーターの駆動パルスを作っていたので制御が粗くなってしまっていた。 そこで今回はやり方を変えて、タイマー割り込みの周期は一定とし代わりにモーター制御用のパルス生成器を作ることにした。
パルス生成器の構造はシンプルにアキュムレータ方式とした。アキュムレータを acc とすると、accは毎クロック acc = acc + αで更新される。また、acc が閾値 N を超える場合は0に戻す。この時パルスが1つ出力される。下図はaccのαが1, 2, 3の場合のaccの軌跡を表している。現在回路は100MHzで動かしているのでNは100_000_000に設定する。すると、αが1の場合1秒に1回パルスが発生し、αが2の場合1秒に2回、αが3の場合は1秒に3回発生する。つまり、αはパルスの周波数を設定することになる。今回のモーターの場合パルス12発で1回転するので、モーターの回転数を RPS (Rotate Per Second)で表すとするとαは 12×RPS になるがこの変換はIP内で行うことにした。つまり、ソフトウェアは秒当たりの回転数を何らかの方法で算出して設定すれば良い。
次に回転数の生成だが、前回採取した波形から起動時の立ち上がりの部分(左下の緑色の曲線)を式化してそれを使って回転数を決定してみることにした。
色々試してみた結果、y = ax^4、a = 1.97499e-11 を使うことにした。 多項式にすると計算に時間が掛かるのでなるべく単純な式にした。タイマーの割り込み周期は1msecにして、割り込みハンドラで y = ax^4 でモーターの回転数 RPS を計算してIPに設定する。 aの値が1.97499e-11とかなり小さいので固定小数演算にすると32bitを超えてしまう。そこで計算はfloatで行うことにした。zumi32-gccはfloatも使えるのでfloat演算自体は問題ないが、zumi32の演算用リソースとしてはバレルシフタのみなのでコンパイル後のマシン語のステップ数と演算に要する時間が気になるところだ。 そこで、コンパイルしたマシン語列をシミュレーションで流してみたところ、割り込み処理時間は約28usecであることが判った。タイマー割り込み周期は1msecにするのでまったく問題ない。(シミュレーションではタイマの割り込み周期は50usにしている。)
で、これを実機で動かしてみたのだが結果はNGだった。起動直後に脱調してしまう。aの値を小さくしたりx^4をx^2にしたりして立ち上がりを遅くすると動くのだが最大回転数は50 [rps](3000 [rpm])が上限だった。そこで、モーターのdrv_A, drv_B, drv_Cの駆動パターンを変えてみることにした。具体的には従前は 011、110、101のパターンを繰り返しており常に2つのコイルを励磁するようにしていたのだが、これを001、011、010、110、100、101と1コイルのみが励磁されるパターンを入れることにした。 これにより今までは12パルス@1回転だったのが24パルス@1回転になるので、IPの設定値を12倍している部分は24倍に変更した。 この他にaの値を色々調整したりした結果 120[rps](7200 [rpm])まで動くようになった。 ヤッタ!!
以下はロジアナで採った波形だ。
Sensorの周期が120Hzなので7200[rpm]で回転していることが判る。
以下は動かしている様子。7200[rpm]ともなると風切り音がすごい。

ということで、zumi32でモーターを制御して7200 [rpm]で回転させることが出来た。また、zumi32のプログラムでもfloat演算を問題なく使えることを確認することが出来た。\(^_^)/

2023年8月13日日曜日

自作CPUで遊ぶ 4

ジャンク箱を確認したら今回使っている以外にもHDD用スピンドルモーターが5個出てきた。電極は殆どが4極だが1つだけ3極の物があった。電極間抵抗を測ると全て同じ値なのでコイルはデルタ型の接続になっているんだろう。
コイル抵抗は全部違っていて(多分品種毎に異なる)、Nidecのが1.8Ω、JVCのが1.6Ω、CAO*が3.3Ω、JBY*が1.2Ωだった。これらはコモン端子とその他の端子間の抵抗値なのでコイル1個の抵抗値だ。また、デルタ型の電極間抵抗は2.8Ωだった。デルタ型の電極間は Rと2R の並列回路として見えるのでR1個当たりに換算すると、2.8Ω = r // 2r = r(2/3) → r = 2.8 (3/2) = 2.8 * 1.5 = 4.2Ω の筈だ。抵抗値が大きいということはコイルの巻数が多いことを意味するのか?もしそうなら抵抗値が大きい方が回転数も大きいかも知れない。。。(ホントか?) 後で動かしてみようと思う。 モーターの駆動波形と実際のモーターの回転数を見たくなったのだが、所有しているデジタルオシロスコープは2CHでCH数が足りないのと、ちょっと測定結果をグラフ化したりしたかったのでロジック・アナライザーで測定することにした。このロジアナは2014年にこのブログで開発したもので、Lattice社のMachXO2-7000評価ボードにロジアナの自作IPを実装した。アクイジションメモリとして16MBのSDRAMをウラ面に無理やり実装している。(以下は当時撮影した写真)
SDRAMは150MHzで動かしている。これに対してロジアナはCH数24、サンプリング速度は100Mspsなので一見スループットが不足するように見えるが、このロジアナは取得したデータをValue Change方式でSDRAMに格納する。この方式はデータ圧縮の効果があり(詳細は当時のブログを参照) 圧縮の程度はデータの変化率に依存するが常にサンプリング周波数に近い速度で変化する信号を測定でもしない限りはまあまあ使える。  このロジアナで使用した評価ボードはLH2232HLを搭載しておりPCとはこれを介してUARTで通信する。UARTは8Mbpsで動かした。また、この後にMachXO2-7000搭載のFPGAボードを自作しこれにもUSB I/F用にLH2232HLを搭載したがFPGAとは非同期FT245モードでも通信出来るようにした。 このモードは非同期8bitパラレルでデータをやり取りするので測定データのアップロードを高速に行うことが可能であり、実際UARTモードよりも6.7倍程度高速に転送できた。今回はモーターの起動からSDRAMの最大容量までデータを取得したい。そのためアップロードするデータ量も多くなるので上記写真の機体ではなく後者のFT245モードが使える方のボードを使用することにした。
モーターの回転数はフォトインタラプタを使って測定することにした。具体的には1箇所穴の空いたボール紙で作った円板をモーターに貼り付け、この穴をフォトインタラプタのスリットに通過させた。
ロジアナの制御は専用のGUIアプリで行うが、久しぶりに起動しようとしたら使っているwxWidgetsのライブラリのバージョンが古すぎて起動しなかったため wxformbuilderでGUIを再編集・生成してビルドし直した。信号はモーターの駆動信号(drv_A, drv_B, drv_C)とフォトインタラプタの信号(Sensor)を採取した。 SDRAMを全領域使って起動時から11秒程度の期間のデータを取得できた。単純に100Mspsの速度でデータを取得した場合、(4*1024*1024)/100e6 ≒ 42msecの期間しか採取できないが、上述の圧縮効果により260倍の期間のデータを取得出来ている。
このGUIアプリには波形の表示機能は無い。その代わりVCDファイルを出力するのでこれをGtkWave等を使って波形表示を行う。以下は取得した信号の波形だ。モーターに貼り付けた円板の穴は1つだけなので1パルス/1回転発生する。従って、このパルスの周期を測れば回転数を求められる。また、前回 drv_A, drv_B, drv_Cに1秒毎にパルスを与えてモータパルス12個で1回転するとしたが、波形からこれが正しかったことが判った。
GtkWaveのExport機能を使って波形データをTIM形式でファイルに出力し、テキストエディタで信号毎のCSVファイルに編集してlibreofficeのcalcに読み込み、回転数に変換してグラフ化した。横軸は起動してからの経過時間、縦軸は回転数 [rpm] だ。
緑色のグラフ(real)はフォトインタラプタの信号から算出した回転数、オレンジ色のグラフ(drive)はdrv_Aの周期から算出した回転数だ。 これを見るとFPGAの駆動に対してモーターの応答に遅れがあることが判る。また、回転速度の上げ方が粗すぎるようだ。モーターの回転数にリンギングのような振動があるのも判る。このリンギングはモーターをちゃんと固定していないのと円板が若干偏心しているのも影響している可能性がある。何れにしろ、測定の分解能が高いのでこの辺の挙動が観測出来ている。なかなか面白い。  … でだ。 どうやったらもっと旨く動かせるんだろう? この系で測定しながら試行錯誤すれば出来るのかしら?


自作CPUで遊ぶ 25

まだ制御ソフトが完成していないので今まではスピンドルを移動するために一々簡単なプログラムを書いて移動させていたのだが、非常に面倒なのでCNCペンダント的なものを作ることにした。 右側の縦に2つ並んでいるスイッチ...